コンテンツの力(パワー)

世界中で高い評価を受ける日本の工業製品。
バイク好きである私からすれば、その代表格に位置付けたいのは当然ながらオートバイ。比肩する者の無い信頼性、高いスペック、安い価格、大型から原付まで揃う充実のラインナップe.t.c. 今後も日本製バイクの地位を脅かす者がいないという点も含めてイチオシです。もちろん、その他にも自動車・光学機器・工作機械・化学素材等々、幅広いジャンルの製品が高い評価を受けていますね。

そういった工業製品だけに留まらず、日本の場合は文化的商品とも言えるコンテンツについても若い世代を中心に世界中で評価されています。漫画・アニメがその代表格になりますが、ゲームも日本を代表するコンテンツ商品の一つと言っていいでしょう。

莫大な貿易額となる工業製品と比べれば小さいマーケットとも思えるコンテンツビジネスですが、人々の内面&心に与える影響力に関しては工業製品を凌駕する力(パワー)を秘めていると言っても過言ではないでしょう。最近起こったある出来事を通じて、改めてコンテンツの力というものを認識しましたので、例によって大げさに語ってみたいと思います。

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METROID PRIME4発表で狂喜乱舞@E3

毎年5~6月にかけてアメリカで催されるゲームの見本市であるE3を御存知でしょうか? 日本で言うところの東京ゲームショウみたいなものなんでしょうが、さすがはショウビズの本場・アメリカ。単なる業界内の展示会というよりは、アカデミー賞やグラミー賞の授賞式のような一大エンターテイメント化された感があり、有力ゲーム関連企業が軒並み顔を揃えて新商品の発表を行う場として世界中の業界関係者やゲーマーたちから注目されるビッグイベントとなっています。

★参照リンク:Electronic Entertainment Expo
〔Wikipedia〕

そのビッグイベントが今年も6月中旬に催されたのですが、Microsoft・ソニー・EA・Ubisoftといったビッグネームたちのトリを飾るべく任天堂のプレゼンが最終日に行われました。

ちなみに背景事情として、任天堂にとって今年のE3でのプレゼンは非常に重要なものであったハズです。今春に次代のコンソールとして販売を開始したSwitchPlayStationXboxといったライバルたちに競り勝つためには、このプレゼンでいかに期待の持てるソフトのラインナップが揃うかをアピールしなければならなかったからです。

その任天堂のプレゼンの中で発表された「METROID PRIME4(メトロイド プライム4)開発中」という告知へのリアクションが面白いことになっていました。

いやぁ、アッチの人たちは感情表現が豊かで面白いっすねwww。
ただロゴが表示されて「開発中」と書かれたテロップが出ただけで、老いも若きも関係無く大盛り上がりwww。半ば半狂乱になっている人なんかも居て。

それでいて、揃いも揃って判で押したように「オーマイガッ!」と叫んでいるのが笑えます。個性的なんだか没個性的なんだかよく解らないというw。想像を超える事象を目にした時には、この一句しか出て来ないんでしょうかね? あと、どうでもいいことですが、男2人で仲良く観ている姿から「そういう関係なんだろうなぁ…? うんうん」と邪推してしまうのは私だけでしょうか?

何はともあれ、「メトロイド」というゲームが海外でも多くの人たちから熱く愛されていたことが十二分に伝わって来るリアクションです。「メトロイド」は派生シリーズがいくつか発売されていて、この「プライム4」の前作にあたる「プライム3」は2008年発売ということで、その間10年近くずっと続編を望むファンの要望が絶えなかったとのこと。

が、この話題はゲーム好きの人たちの間ではとっくに既知の話題だったらしく、まとめサイト等でもエントリーが乱立していた模様。そこで、本エントリーを掘り下げるために、その他のリアクション動画も探してみました。

非英語圏のリアクション

アメリカ人の反応だけで「世界で~」とか語るのはおこがましいので、非英語圏の人たちのリアクションも見てみましょう。

イタリア人の反応。(該当箇所から再生開始)
蛇足ながら12:22からのカービィの発音も面白いっす。
Kirbyは英語だと「カーヴィー」ですが、英語以外の言語だと「キルビィー」という感じの発音になりますね。

ドイツ人(?)の反応。(該当箇所から再生開始)
この人たちは「カーヴィー」と発音している……?(8:40から)

ラテン語圏の反応。スペインか南米?(該当箇所から再生開始)
完全に「キルビィー」派。(1:57から)

アメリカ人たちと全く同じように、そこそこイイ歳いってそうな人たちも若そうな人たちもこぞって大喜びしてますね。まぁ、ファミコンの出荷台数が全世界累計で約6,291万台+スーファミが約4,910万台と2機種合計で約1億台以上売れ、その後の機種も世界中で販売されていたということを考えると、「メトロイド」というゲームに触れた経験のある人は世界中に居ると考えても間違いではないでしょう。

ゲーム愛&キャラクター愛の大きさが判るリアクション

続いては他のゲームへのリアクション動画を。

「ファイナルファンタジー7」のリメイクが発表された時の模様。
背中に大太刀を背負ったキャラ(クラウド・ストライフ)が画面に映った際の盛り上がり具合から、聴衆の人たちが如何に大きなキャラクターへの愛を持っているかが判りますね。そのキャラ愛がゲームタイトルへの期待の原動力になっている気がします。

こちらはメガマン(ロックマン)が「スーパー・スマッシュ・ブラザーズ」に登場する発表がされた際のリアクション集。大ヒット作となったタイトルそのものへの愛はもちろんのこと、ロックマンというキャラクターが彼らにとって大きい存在であることがよく判ります。

冒頭に挙げた「メトロイド プライム4」へのリアクション動画内で散見されますが、部屋の壁にゲームやキャラのポスターを貼っていたり、棚にフィギュアやぬいぐるみを並べていたり、ゲーム関係のTシャツを着ていたりする人の多いこと。単に画面上でゲームをプレイして「楽しかった」で終わるのではなく、ゲーム&キャラをコンテンツとして愛している人たちが大勢居るという事が判ります。また、海外のアニメイベント等でゲームキャラクターのコスプレをする人が大勢居るという事実もその証の一つと言えるでしょう。

ANIME EXPOでも同じ現象が

E3から2週間後。日本産サブカルチャーが大きく関与するもう一つのビッグイベントが開催されました。“アメリカ版コミケ” という例えが的を射ていると思われるANIME EXPOです。恐らくですが、フランスで毎年開催されているJAPAN EXPOと並ぶ “世界二大日本サブカルイベント” の一つと言えるかと。(個人的に日本のコミケはその上位に位置するモノと考えています)

★参照リンク:アニメ・エキスポ
〔Wikipedia〕

昨年25周年を迎えたANIME EXPOがオープニングセレモニーで流した映像に対する反応を見ると、ゲームに対するそれと同じ現象が起きていたことが判ります。(該当箇所から再生開始)

自分の好きなキャラが登場すると歓喜の大声を上げて感情表現をする。まぁ、実にオープンなアメリカ人らしい反応ですね。そして、その判りやすい反応から、アニメやゲームといった日本製コンテンツが異文化で生まれ育った若者たちに浸透して影響を与えていることが如実に見て取れます。

年齢&人種の壁を超えて

再び今年のE3関連の動画に戻ります。
色々と検索した中で私が一番興味深くて好きだった動画。

NYにある任天堂ショップでプレゼンテーションの配信をライブビューイングしている様子を伝える動画。一応、「メトロイド」に関する箇所からの再生開始ですが、全編観ても面白いです。

「メトロイド」ロゴが画面に表示された時の人々の歓喜具合!
何よりホッコリさせられるのが、黒人も白人もアジア系(極東系orマレー系)も人種を問わず皆が喜びを共有しているところ。先の動画と併せて言えば、年齢の壁も超えていると言っても過言ではないでしょう。

時代や文化的背景&民族的背景を超えて喜びを共有出来るのは何故か?
それは、『メトロイドを楽しくプレイした原体験、そして「メトロイドが好き」という感情を共有しているから』でしょう。肌の色だけでなく、言語も宗教も風土も教育制度も食生活も何もかも異なるバックグラウンドを持った人々を相手に訴求する力。

それこそが、

コンテンツの力(パワー)

です。

政治家やリベラリストを名乗る連中が善人面して「民族融和」or「人種融和」を唱えたところで、所詮は空虚な言葉遊びでしかありません。偏狭な絶対的正義を掲げる某国首相が「私たちは寛大な心を以て移民を歓迎します!」と言った結果、自国民同士の分断を生み、テロの温床を育み、文化的アイデンティティー喪失の危機を生んだだけだったように、表面を取り繕っただけの言葉&制度には人種民族文化歴史といった様々な障壁を乗り越える力(パワー)はありません。

むしろ、これまで挙げてきた動画の数々からは、「皆が楽しめる面白いゲームを創ろう!」というシンプルな情念から生まれた一本のゲームタイトルの方がよっぽどそれら障壁を乗り越える力(パワー)を持っているとすら思えます。

コンテンツが秘める可能性

特定のコンテンツへの興味&関心は、異文化への興味&関心へと更に発展していく可能性を秘めています。そして、それはつまり『相互理解』という民族や人種の融和に欠かせないプロセスに繋がる可能性でもあります。

★参照リンク:Podcast: We Can’t Wait For The SNES Classic
〔KOTAKU〕

上記リンク先はゲームマニア向けの情報サイトの編集者によるPodcast更新を伝える記事です。そのPodcast番組の冒頭で、編集者が「日本語を学び始めたよ!」ということを喜々として報告し始めます。日本語を学ぼうと思ったきっかけは……? 「RPGをはじめとした日本製ゲームをより深く理解したいから」とのこと。

ドラクエやFFといった物語をベースにした日本のRPG(ロールプレイングゲーム)は海外では “JRPG” として一つの独立したカテゴリーに分けられているらしく、ゲーム業界に於けるメインストリームではないものの、特定のファン層にはウケているみたいです。そして、そのファン熱が高まった結果、「原語で楽しみたい!」となった模様。翻訳の場合、翻訳者の意図や知識やボキャブラリーによって本来のニュアンスが変えられてしまう恐れがありますからね。

ゲーム熱が高じて外国語を学び始めるって凄い情熱だなぁ! と感心しきりですが、他国の言語を学ぶということは、その国の文化・歴史・社会等を理解するということと同義でもあります。まさに相互理解の第一歩! 上記記事のコメント欄にも興味深いコメントが書き込まれておりました。

I tried valiantly to learn in high school for close to the same reasons (50% fascinating culture, 45% JRPGs and 5% Anime interests)…

「私も高校の時に似たような理由(魅力的な文化:50%/JRPG:45%/アニメ:5%)から勇気をもって日本語を学ぼうとトライしたんだ~(後略)」

残念ながらコメント主の方は高校と大学で日本語習得に挑戦したものの芳しくない結果に終わったようですが、このように漫画・アニメ・ゲームをきっかけに日本語を学び始めた!or 学びたい! という声は、向こうの掲示板などを見ていると枚挙に暇がありません。

★参照リンク:Learning Japanese because of anime?
〔Anime News Network〕

★参照リンク:Do you want to learn Japanese?
〔Anime News Network〕

漫画・アニメ・ゲーム以外の分野でもコンテンツから起因した日本語学習の例はあります。以前本ブログでBABYMETALの躍進に関するエントリーをアップしたのですが、それ以後もredditのBABYMETAL板をちょくちょくチェックしておりまして。すると定期的に「BABYMETALの歌詞&世界観をより深く理解するために日本語を学ぼうと思うんだけど…」的なスレが立ちます。

★参照リンク:おっさんの感想:BABYMETALは日本社会の多様性の証? Part.1
〔暇さえあれば備忘録〕

★参照リンク:Put your Kitsune up!
〔reddit〕

次に日本の歴史への興味が高じた一例。

日本の歴史を超早足で軽快に紹介している動画で、2016年2月公開からわずか1年半で既に3000万回以上再生されています。動画制作者が日本に興味を持ったきっかけは不明ですが、動画最後にマリオとドラゴンボールのシーンが一瞬映り、「すべてのものがクールだと思う」というナレーションで締めくくられているところから推測すると、やはりゲームかアニメをきっかけにして日本という国の歴史に興味を持ったと考えても良いのではないでしょうか?

人が他人に対して好意を抱く場合、前提としてその相手への興味&関心は欠かせないと思います。何の興味も関心も無い、全く異なるバックグラウンドを持った人たちに対して「好意を持て! 融和しろ!」といきなり言われても、そりゃ無理でしょう。相手に何がしかの魅力的な部分を見つけることで興味&関心を喚起し、そこから相手への理解が深まって好意に繋がるというものです。

日本の場合、漫画・アニメ・ゲームといったコンテンツが興味&関心を喚起する強力な武器として作用しています。「日本人は創造性が高い」と認識されているという調査結果からも明らかなように、その作用は日本という国・文化・人々に対する理解度向上とイメージ向上に大きく寄与しているのは間違いの無いところ。

★参照リンク:アドビ、クリエイティビティに関する世界的な意識調査「State of Create: 2016」の結果を発表
〔Adobe ニュースルーム〕

記憶に新しいリオ五輪の閉会式。
2020年東京大会のプロモーション動画でマリオやアニメキャラが登場したことに対する反響はかなりのものでしたね。会場内では歓声が沸き、ネット上でも「絶対に東京に行く!」だの「五輪史上最も楽しみな大会だ!」といった声が溢れていました。

★参照リンク:おっさんの感想:個人的リオ五輪振り返り Part.3
〔暇さえあれば備忘録〕

オリンピックという人類最大の祭典をも更に魅力アップさせてしまう日本のコンテンツ。

「たかが漫画」「たかがアニメ」「たかがゲーム」
そんなセリフで切って捨てることの出来ない程の力(パワー)をコンテンツは有しています。

番外編:ついでに思ったこと

例によって書いている内に風呂敷を広げ過ぎてしまった…。
という反省点は置いておいて。

漫画・アニメ・ゲームといった日本産コンテンツが世界でウケている現在の状況を見て興味深いのは、それら作品群を創っていた人たちは誰も「世界でウケること」なんて想定していなかっただろうなぁということ。

最近の作品は別として、「ルパン三世」や「マジンガーZ」といった旧作品をはじめ、もっと後の「カウボーイ・ビバップ」や「攻殻機動隊」に携わっていた人たちですら「世界という市場で海外の読者or視聴者たちから賞賛される」という事態は考えていなかったんじゃないですかね?(例に挙げた作品だけでなく、あらゆる漫画・アニメ・ゲームに於いて同様と推察) あくまでも日本国内で売れる or 日本国内で高評価を得ることだけを目標として創作活動をしていたんじゃないかと思うのですよ。

英語という世界共通語をバックグラウンドとするアメリカ産のコンテンツは世界全体がターゲット市場となりますが、日本人しか話さない日本語コンテンツは当然ながら国内市場オンリーでの消費となる訳で。漫画とアニメに関しては、そもそも産業自体が日本にしか無いという有り様でしたしね。内容的にも「日本人にしか解らない心情」とか「日本人にしか解らない背景」とかが絡んで来る訳じゃないですか。侘び寂びとか死生観とか歴史ネタとか時事ネタとか等々。

日本人クリエイターが「日本人にさえ解ればいい」という前提で創作した数々の漫画・アニメ・ゲーム作品が、言語・宗教・歴史など全く異なる世界中の人々にウケた&ウケている。

この事実を鑑みると、

結局、人間って根底は一緒なんだよなぁ

とつくづく思うんですよね。

若かりし頃にイングランド北部の街に短期留学に行きましてね。全盛期が産業革命時で以後は衰退する一方という寂れた街だったもんで、日中繁華街の路上で「この黄色いクソ中国野郎!」と失業者風の男にいきなり罵倒されたりするんですよ。そんな時は当然「このクソ白豚がぁ~!」とか憤ってたんですけど、一方で同じ白人イングランド人の友人が「そんなヤツいるんだ…。もし今度そんなクズが居たら俺が守ってやるよ!」とか力強く言ってくれたりして。

そういった経験を経た結果、「人間は国籍とか宗教とか肌の色といった属性ではなく、その個人の人間性で判断する」というキング牧師と同じ信条を体得した次第です。偉人の名前を出すなんておこがましくて恐縮ですが。

日本人にも良い人も居れば嫌なヤツも居る。それはアメリカ人だろうがイタリア人だろうが中国人だろうがナイジェリア人だろうが全て同じ。

日本産コンテンツだからって日本人が全員好きな訳ではなく、漫画・アニメ・ゲームに全く興味の無い日本人も大勢居る。逆にそれらが大好きな日本人も大勢居る。国が変わってもその状況は全く同じで、Manga・Anime・JRPGが好きなアメリカ人orイタリア人or中国人orナイジェリア人orその他も大勢居れば、全く興味を示さない人も大勢居る。ただそれだけのことなんだなぁ、と。

そんな事を思ったのでありました。